ノロウイルス感染症の対処法

ノロウイルス感染症の対処法:症状管理と回復のための完全ガイド

ノロウイルスは、激しい嘔吐や下痢を引き起こすウイルス性胃腸炎の主要な原因です。現時点で特効薬やワクチンは存在せず、治療は「症状の緩和」と「脱水予防」が中心となります。この記事では、医療機関や公的機関1 の推奨に基づき、安全な対処法と予防策を徹底解説します。

症状管理:自宅でできる5つの対策

1. 脱水予防のための水分補給

  • 経口補水液(ORS)を優先:
    嘔吐や下痢で失われる電解質(ナトリウム・カリウム)を効率的に補給できます。市販のORS(例: オーエスワン)や、家庭で作る場合は「水1L+砂糖40g+塩3g」が目安です。
    ▶ 避けるべき飲み物: スポーツドリンク(糖分過多)、炭酸飲料、カフェイン入り飲料。
  • 少量頻回法:
    1回に飲む量は「ティースプーン1杯(5ml)」から始め、15分間隔で徐々に増やします。嘔吐した場合は30分休んで再開。

2. 食事の工夫

  • 絶食は不要:
    胃腸を休めるために「6時間程度の絶食」は有効ですが、その後は消化の良い食事を開始します。
    ▶ 推奨食品: おかゆ、うどん、パンがゆ、豆腐、りんごのすりおろし。
    ▶ 避ける食品: 脂っこい料理、乳製品、香辛料、アルコール。
  • BRATダイエットの限界:
    従来推奨された「バナナ・リンゴソース・トースト」だけに固執せず、早期に通常食へ移行することで体力回復を促します2

3. 薬物使用の注意点

  • 下痢止め(ロペラミド)は原則使用しない:
    ウイルスの排出を遅らせ、回復を妨げるリスクがあります。
  • 抗生物質は無効:
    ノロウイルスは細菌ではないため、抗生物質は効果がありません。
  • 解熱鎮痛剤:
    アセトアミノフェン(カロナールなど)は38.5℃以上の発熱や頭痛に限定して使用。

4. 嘔吐物の適切な処理

  • 感染拡大防止のため:
    1. 手袋・マスクを着用し、ペーパータオルで拭き取る。
    2. 汚染場所を「塩素系消毒剤3」で浸すように消毒(例: キッチンハイターを200ppmに希釈)。
    3. 処理後は石鹸で手を20秒以上洗う。

5. 休息と体温管理

  • 安静時に横向き寝を推奨(嘔吐時の誤嚥防止)。
  • 発熱時は脇や首を冷やし、脱水が疑われる場合は経口補水液を継続。

医療機関の受診が必要なケース

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関へ連絡してください:

  • 重度の脱水サイン:
    • 乳児: 涙が出ない、おむつが6時間以上乾いたまま。
    • 高齢者: 皮膚の弾力性低下(つまんだ皮膚が戻らない)、意識の混濁。
  • 危険な症状:
    • 血便または黒色便。
    • 38.5℃以上の高熱が24時間以上持続。
    • 激しい腹痛が次第に悪化。

予防策:感染を広げないために

  1. 手洗いの徹底:
    • 石鹸と流水で20秒以上、指の間・爪の間まで洗う。
    • アルコール消毒は補助的に使用(ノロウイルスには効果が限定的)。
  2. 家庭内感染対策:
    • 感染者とトイレ・タオルを共有しない。
    • ドアノブ・リモコン・スマホを1日1回消毒。
  3. 食品の加熱処理:
    • 二枚貝(カキなど)は中心温度85℃以上で1分以上加熱。

まとめ

ノロウイルスは適切に対処すれば、数日で自然回復が見込めます。重要なのは「脱水予防」「薬物の慎重な使用」「家庭内感染防止」の3原則です。症状が重い場合は迷わず医療機関を受診し、特に乳幼児や高齢者は早期対応を心がけましょう。

脚注

  1. 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」、CDCガイドラインを参照。 ↩︎
  2. 米国小児科学会(AAP)は2016年にBRATダイエットの推奨を中止。 ↩︎
  3. 次亜塩素酸ナトリウムを含む製品(ハイター、ミルトンなど)。 ↩︎

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